1930年から20年間にわたり甘美な演奏で全米を風靡した音楽家エディ・デューチンを主人公とした映画で、デューチンと親交のあったレオ・カッチャーがオリジナル・ストオリイを執筆し、サム・テイラーが脚色し、「ショーボート」「悲恋の王女エリザベス」のジョージ・シドニーが監督、「野郎どもと女たち」のハリー・ストラドリングが撮影、音楽は「ピクニック」のモリス・ストロフが担当している。なお、この映画の中のピアノ演奏は名手カルメン・キャヴァレロが吹き込んでいる。主演は「長い灰色の線」のタイロン・パワー、「ピクニック」のキム・ノヴァク、新人ヴィクトリア・ショウなど。
愛情物語(1955)評論(9)
薬剤師とという安定した職業を捨て、ピアニストになろうとNYセントラル・パーク・カジノのレイ・ライスマンを訪ねるエディ。最初はあっけなく断られるも、資産家の娘マージョリー・オルリックスの口添えのおかげで楽団のピアニストに。メキメキと才能を発揮し、楽団のリーダーに成長するというサクセスストーリーの前半。しかし、結婚したマージョリーが出産と同時に亡くなってしまう。これだけでもお腹一杯になりかけたのに、さらに成功と悲運が待ち受ける。
息子ピーターを残して演奏旅行。そして海軍へ入隊。戦災にあった子どもとピアノ連弾を通して、残してきた息子への想いが一層強くなるエディ。作品全体を通してみても、この連弾シーンが最も感動的。
序盤のライスマン楽団でも一瞬連弾シーンがあったし、戦地の連弾、そしてピーターとの連弾と、ピアノの重厚さが特に印象的。ショパンのノクターンをアレンジしたテーマ曲が有名すぎるので、ストーリーや映画そのものの完成度は高くないものの、早世したエディ・デューチンの心が伝わってくるかのようでした。ただ、「愛情物語」という邦題はいかがなものかと・・・
BSPにて
ストーリー: 65
キャスト: 70
演出: 60
ビジュアル: 75
音楽: 85
才能があり成功しながらも不幸に見舞われ、純粋ゆえに苦悩する主人公。話を盛り上げるために主人公や物語を綺麗に描きすぎているような感じは多少は受ける。この時代はとにかく完全に善良な主人公の登場が求められたのかもしれない。でもそれほど悪い映画ではないのは、真実を基にした話だからか。
2.エディが失意の中、ショパンのノクターンを弾いていると、その調べに惹かれた令嬢、マージョリイ・オルリックス(キム・ノヴァク)が、ライスマンに掛け合い彼はピアノを演奏する。
3.とともに、エディとマージョリイは恋仲になり、結婚。
―凄いスピードで、物語は急上昇で進む。-
4.が、マージョリイはピーターを生んだ後、息をひきとる。エディは失意の中、愛息子を叔父夫婦にあずけ、妻を忘れようとするように、演奏旅行に出かける。
そして、デューチンは海軍に入るが、演奏を含めた慰問活動は全て断る。だが、終戦時、敗戦国(日本か?)で浮浪児らしき子とピアノを弾き、演奏の楽しさを思い出す。
そして、久しぶりに叔父夫婦に預けたままだった10歳になったピーターと再会するが、二人の態度はぎこちない・・。
ー幼子の時から会っていないのだから、当然である。-
5.ピーターは、父とはぎこちなかったが、英国の美しい娘チキータ(ヴィクトリア・ショウ)になついていた。そして、徐々にエディも彼女に愛情を感じて行く。
ある日、エディはピアノの演奏中左手がしびれ、演奏が出来なくなる。彼は病に侵されていた。彼は、チキータとの結婚を躊躇うが、彼女は承諾する。
そして、エディとピーターとチキータはつかの間の幸せな生活を送る。
しかし、徐々にその時は迫っていて・・。
<ラストのエディとピーターがピアノを2台向かい合わせにした(ピーターのピアノとチキータのピアノ)状態での連弾シーンは印象的である。
二人で弾いている筈のピアノが引きのカットで、手前のエディが映っていないシーン・・。
一人の”幸せを紡ぐ”ピアノを弾く男の、ジェットコースター人生を気品高く描いた作品である。>
伝記映画なのでより一層真実味があり感動的。