「アフリカの女王」のサム・スピーゲルが1954年に製作したホライズン・プロ作品。悪徳ボスに支配された紐育の波止場の実態を描くマルコーム・ジョンスンの探訪記事『波止場の犯罪』(サン紙連載)を小説家のバッド・シュールバーグが脚色し、「綱渡りの男」のエリア・カザンが監督した。撮影はフランス出身のボリス・カウフマン、音楽はレオナード・バーンスティンの担当。主演は「乱暴者」のマーロン・ブランドで、新人エヴァ・マリー・セイント、舞台俳優リー・J・コッブ「征服への道」、カール・マルデン「語らざる男」、ロッド・スタイガーらが共演する。
波止場(1954)評論(9)
波止場の全てを仕切る悪の親玉がいるが、この時代ならば本当にそのようなことが普通にありそう。搾取される労働者と、彼らの存在の上に成り立つ働かないのに裕福な既得権益層があり、社会問題の提起も含めて面白い主題だった。ボン・ジョビの名曲「livin' on a prayer」の歌詞を思い出す。やはり強大で凶暴な組織に逆らうのは怖いものだ。既得権益層に逆らうということは、本来は搾取されている側の労働者仲間から見放されるということだから味方がいないのは辛い。若いころに最初に観たときはそうでもなかったが、このような状況がわかるようになるとその深刻さが理解できる。
だが制作年が古いこともあって、演出が古くてあまり迫力がないのだ。人を殺す部面も殴りあう場面も悪い奴らが凄む場面も、現代の映画からみると弱い。唯一、タクシーの中の兄弟の会話は悪くなかった。たくさんの賞をとった有名作なのは知っているのだが、それほど面白いと思ったわけではない。同じ原作で再映画化すればずいぶんと良くなると思う。
エキストラに動員された波止場の港湾労働者=日本風に言えば沖仲仕達の人相風体や表情が本物だけに、ロケ地のNYのハドソン川の対岸ホーボーケンの殺伐とした空気感を見事に伝えてくれる
主人公のマーロンブランドと兄役のロッドスタイナーのタクシーでの対話シーンは名演技とはこの事だ!という凄さ
ヒロインも役設定にピッタリ
彼女にモーションをかけるマーロンブランドの演技がまた素晴らしい
見応えのある名作です
波止場を牛耳るギャングのボスに立ち向かう話。結局あそこまで腐敗しきって危険を脅かされる状況では自分だけ立ち向かっても多くは助けてくれず、むしろ白い目で見られ迫害されていく、という描写にリアルさ感じた。
しかしその状況で、普通だったら証言を終えた後、迫害されるのを恐れ地元を去ってしまうであろう所を最後まで1人で戦い続けるところに主人公の強さを感じた。その反面そこまで行って初めてその他大勢が動き出すというのは大衆のダメっぷりを感じさせてくれた。
神父の主張が強烈なのが新鮮だった。
若い頃のマーロンブランドも見れて良かったが、リー・J・コッブという「十二人の怒れる男」にも出ている役者がいい味を出していた。