26歳の若さで他界した沖縄のお笑い芸人・山城達樹の人生を、自身も芸人として生きる実弟・山城智二が長編初監督を務めて描いたセルフドキュメンタリー。幼なじみの山城達樹と渡久地政作が沖縄大学の学生時代に結成し、1990年代の沖縄で絶大な人気を誇った漫才コンビ「ファニーズ」。ツッコミ担当の達樹は、93年にお笑い芸人を中心とする芸能事務所・FECオフィスを設立。彼は沖縄の笑いを近代的に組織化することで沖縄の人々に広く浸透させ、この地を笑いの島にしたいと考えていた。しかし人気絶頂の96年8月、達樹は26歳の若さで急逝。その後、同じく芸人である弟・山城智二が兄の遺志を引き継いでFECオフィス代表となり、27年間を駆け抜けてきた。映画では達樹と時代をともにした人たちへのインタビューや当時の映像、達樹が残したノートなどを通して彼のたどった道を巡り、その人生を通して戦後沖縄の笑いの歴史をひも解いていく。
ファニーズ評論(1)
ネタバレなしで感想を書くと、まずドキュメンタリーとして完成度がとても高いことが良かったです。例えるならめちゃくちゃ出来の良いNHKの特番って感じで、出てるタレントも超大物って訳でもないし(めっちゃ失礼)、取り上げてるテーマも今まで興味を持ったことも無いくらいなのに(めっちゃ失礼)、様々な人物の濃いインタビューを心地いいテンポで見せてくれて、思わず見入っちゃいます。カメラの手持ち感や環境音が結構入ってるところ等の良い意味で大作映画っぽくない、低予算の感じと相まって、製作陣の「高品質なドキュメンタリーを作ってやろう」というハングリー精神が伝わってエモいです。
しかしそれでありながら、映画としても素晴らしい仕上がりになっているのが自分が今作をオススメする最大の理由です。今作の監督を務めた「山城智ニ(やましろともじ)」は前述した「やましろたつき」の弟で、「たつき」の立ち上げた芸能事務所「FEC」を引き継ぎ、現在社長として頑張っています。その境遇を含めて、異常なまでにドラマチックな「たつき」の生き様を今作は見事にフィルムに収めています。ドキュメンタリーにおいて過度な映画的演出を入れると、ノイズになってしまうことも多いですが、今作における映画的演出はこの現実が持ってるドラマ性を映画として映し出すための極めて自然で、誠実なものとなっております。その演出により、3部構成の中盤から終盤にかけて、映画として凄まじい勢いを見せてくれるところが今作の白眉だというふうに思います。ほんとに志の高い、そしてそれに見合う手腕もきちんと伴った傑作です。是非ご覧になって頂きたいです。