「かもめ食堂」「彼らが本気で編むときは、」の荻上直子が監督・脚本を手がけ、震災、老々介護、新興宗教、障害者差別といった現代社会が抱える問題に次々と翻弄される家族の姿を描いた人間ドラマ。須藤依子は「緑命会」という新興宗教を信仰し、祈りと勉強会に励みながら心穏やかな日々を過ごしていた。そんなある日、十数年前に失踪した夫・修が突然帰ってくる。自分の父の介護を依子に押しつけたままいなくなった修は、がんになったので治療費を援助してほしいという。さらに息子・拓哉は障害のある恋人を結婚相手として連れ帰り、パート先では理不尽な客に罵倒されるなど、自分ではどうしようもない苦難が次々と依子に降りかかる。湧きあがってくる黒い感情を、宗教にすがることで必死に押さえつけようとする依子だったが……。主人公・依子を筒井真理子、夫・修を光石研、息子・拓哉を磯村勇斗が演じた。
波紋評論(16)
ちょっとサイコで笑えてしみじみとした悲しみもある。
とにかく腹立たしい前半から、いいぞいいぞやっちまえ!な後半に渡って、主人公と一緒に自分の気持ちもジェットコースターばりに浮き沈みして面白かった。
優しい人、正直な人が損をする世の中。
夫が身勝手すぎて腹が立つ。(映画観ながら思わずハァァ??って言った)
許せ、という宗教も腹が立つ。
我慢して耐え続ける主人公にも腹が立つ。
観ている私にもあの水が必要か?と思う頃に転機が来る。
宗教は信仰心を継続させるために、忍耐が美徳と信じ込ませるので、これを乗り切ってこそ!と思い込まされるのだけど、その人の心を正気で保たせるための一縷の望みなのに、宗教側からみたら、信者のしんどい時こそお金の引っ張りどきというのが本当にみていてしんどかった。ここも怒りを感じたわ。
諸悪の根源である夫は私の苦手を全て詰め込んだような人!
食べ方に品がない、寝ててもうるさい、妻を母親と勘違いしているかのような精神的な甘え方、何より許されることに微塵も不安がない所に私の彼への怒りが頂点に。
いくつなの?
赤子??
豆腐の角に頭打って、、ってこう言う時使うんだな!!!
このように旦那氏が出てくる場面はほぼ怒りながら観てた映画ですけども、気持ちをぶつける場面の演出がとても面白かった。
なるほど、人の気持ちって目に見えたらあんな風に伝わってるのかもしれんな、と思った。
アフタートークで監督が旦那さん役の方はとても良い方で、どうしようもない彼を愛嬌のある憎めない方に演じてくれた、のようなお話があった。確かにみるひとが見れば、可愛い人なのかもしれない。
。。
フー。。
(気持ちを抑えている)
全体的に監督のユーモアが垣間見られる、ブラックコメディな感じが面白かった。
もっと深刻な感じなのかと思っていたら、意外と笑えて楽しい。
そしてなんかちょっと漫画みたいな世界観もよかつたか。
面白い!
義実家に帰りたくない奥様におすすめしたいです。みんなか。
それぞれ強烈なキャラクターだけど、みんなどこかしらユーモラスで憎めない。
人間味あふれる愛すべき人々に感じました。
表向きにはわからないけれど、みんなそれぞれ、いろんなものを抱えている。
ラストは圧巻です!
クラップ音と水滴の音が印象的。
音は空気の振動だから、一度言葉に出すと波紋が生まれ、もう元には戻れない。
息子の恋人の設定も、まさに音と波紋。
穏やかな水面に波風が立たないよう、グッと言葉を呑み込む… 筒井真理子さんの絶妙な演技が笑えます。
怒りや呆れ、様々な感情が複雑にミックスされているのに、それが手に取るようにわかる。
自分が置かれた状況をグッと呑み込む精神的負担を軽減してくれたのが、宗教だと感じました。
見返りや対価を求めてくるような神様は厄介ですが、
当の本人も、自分の心の平安を保つ為に宗教を利用しているのだから仕方ない。
でも、ちょっとした言葉がきっかけで、勇気づけられたり、人との繋がりが生まれることもある。
幾重にも重なってぶつかりあった波紋は新たな紋様になって、いつしか一つに混ざり合う。
『愛しのアイリーン』もすごかったけど、本作でも木野花さんが素晴らしかった〜!
なんだかんだで女の人生は忙しい。
わかりやすいところだと、結婚して子育てが一段落した途端に介護が始まる。
人生の節目節目で自分のなかの優先順位を変える必要にせまられがち。
それに、たとえ結婚/出産を選択しなかったとしても、自分自身の体の問題には直面するだろう。
そもそも女性は、自分ではハンドリングできない女性ホルモンと共に生きていて、望む望まないに関わらず、毎月生理がやってくる。
個人差はあれど、周期を把握して傾向を分析し対策を備える。生理から解放されたと思ったら更年期症状が始まり…
突発的な出来事に対応するスキル=危機管理のPDCAサイクルを少女の頃から養っているのだ。
そりゃ〜、自然と適応能力も高くなりますよ。
そりゃ〜、子育てだって介護だって無難に出来ちゃいますよ。
でも。だけど。それだからって。ワンオペで良い理由にはならないし、同じことをしていても「やってあげたい」と思うか「やらされている」と思うかでは大違いなのです。
とにかくラストが圧巻!
トークショーで、なぜこれを選んだのか?の質問に監督は「天から降ってきた。」と回答されてました。
『川っぺりムコリッタ』の“塩辛”も本当に絶妙なチョイスでしたが、確かそれも同じようにおっしゃってました。
天才かよ!
今回も、枯山水、金魚、亀、プール、サウナ、などの象徴的なアイコンが実に良い!
筒井真理子さんの「監督は撮影中カメラを通さず直接肉眼で芝居を見て判断をしてくれて、自分の感覚と合っていた。」とのコメントに監督は「演出に自信がないので、撮影監督にお任せしている。」と答えてました。
映るものに関しては撮影監督に全面の信頼を寄せていて、ご本人はカメラの横で肉眼で観て、何か足りないと感じた時にもう一回お願いする。
「自分の感覚に正直に」を大事にしているとのことでした。
研ぎ澄まされた感覚で直感を疑わずに映画を撮ってらっしゃるのだなぁ。だからあのパッションに繋がるのか。と、なんだか腑に落ちました。
ベテラン演技陣による二時間。
最悪な環境、壊れた家族。
登場人物はなるほど確かに「ヤバイ」ところがある。
なのになぜか笑えてしまい、何度も笑いが起きていた。
ハマる人はハマるし、乗れない人はもしかしたら寝てしまうかもしれない。
自分は好きだった。
人間関係も、噂も、波紋のように影響しあい、広がっていく。
爽快なラストで良かった。
光石研さんの憎めなさが好き(笑)
いろんな要素が詰まっているのは確かなんだけど、
よくわかんないと言えばよくわかんないんだけど、
でも、なんか良かった
『彼らが本気で編むときは、』では「性」、『川っぺりムコリッタ』では「死」という、普段どこかタブーとされているテーマを時折ギョッとする描写で語る荻上直子。
どこか楽観的な雰囲気も相まって「怖がることない。普通のことだよ」と言っているような印象があった。
ただ、今回の映画でのタブーは「女性」「原発」「新興宗教」「障害者差別」と幅広く手をつけており、結果的にそれらが投げっぱなしになっていると感じた。
前2作ではテーマを絞ったことで、そのテーマに対する登場人物それぞれの向き合い方の多様さを描いていたが、そういう意味では今作は奥行きの深さには欠けているかもしれない。
だが、あのサウナのシーンでは大笑いさせてもらった。声を出して笑ったのは『シャザム! 神々の怒り』の手紙のシーン以来。
総合的には満足感が勝った。