メキシコの農村を舞台に、母を亡くした少年と1頭の子牛の絆を描いたドラマ。ハリウッドで赤狩りの標的となった脚本家ダルトン・トランボがロバート・リッチという偽名で原案を手がけ、1957年・第29回アカデミー賞で原案賞を受賞した。貧しい農家に生まれ育った少年レオナルドは、母を亡くし父や姉と暮らしている。母の葬式を終えた夜、レオナルドは落雷による倒木の下敷きとなって死んだ母牛のそばに、生まれたばかりの黒い子牛を発見し家に連れて帰る。子牛に「ヒタノ」と名付けて愛情たっぷりに育てるレオナルドだったが、ヒタノは牧場主のものであることが判明。レオナルドは学校の先生の助けを借りて牧場主に手紙を送り、ヒタノを譲り受けるが……。「情熱の航路」のアービング・ラッパーが監督を務めた。2022年11月、特集企画「12ヶ月のシネマリレー」にてレストア版が公開。
黒い牡牛評論(2)
大衆受けしか頭にない社長の無理難題を安い脚本料で量産したトランボへのご褒美なのでしょうか、真面目な本作の製作を承知しました。本作はトランボがかってメキシコの闘牛場を訪れた折に万雷の喝采の中で一人だけ泣いている少年を見かけたことが創作のきっかけと語っています。
勿論、本だけではありません、主人公の少年(マイケル・レイ)をはじめ俳優や撮影スタッフに至るまで良いものを創ろうと言う本気度、情熱を感じます。闘牛という世界観も現地の人々の共感を得やすかったのでしょう、全面協力が得られたようです。
闘牛場の場面も良かったですが、ピューマに襲われるシーンも素晴らしい、CGなんて無い時代に動物たちのアクションの凄いこと、B級プロダクションなんて言って失礼しました、キングス・ブラザーズ万歳と叫びたくなります。時代を超えた感動ドラマ、不朽の名作です。
前半は大袈裟な劇伴がいちいちついていたり、男女、父と息子、職業などがあまりにステレオタイプでついていけなかった。メキシコ・シティにレオナルドが着いてからも有り得なくて頭の中が❓️。でもだんだんとこれはレオナルドとヒタノの「ローマの休日」なんだと思うようになった。
闘牛場の場面では劇伴は消え、ヒタノに完全に感情移入した。闘牛士の姿は美しかった。そしてそれ以上にヒタノは強く勇気があって美しかった。