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男はつらいよ 寅次郎恋歌評論(12)
寅さんがヒロインの池内淳子の借金の手助けをしようと商売に励むが、あまりに圧が強すぎて全然売れず警察がすぐに来る。「あなたのためなら腕や足の一本くらい」と言葉を掛けるが結局のところケツをまくって旅に出てしまう。その後、彼女親子がどうなったのかはわからない。なんともつらい話だった。
寅さんが子供と遊ぶ場面が楽しかった。
博の出身地が北海道だったと思うのだが岡山県になっていた。
マドンナ役は新東宝の看板女優だった池内淳子。割烹着の似合ういいオンナ。
初代おいちゃん役の森川信とは、悲しいけれどここでお別れ。
シリーズ8作目。
寅さんが近所でバカにされ、今度帰ってきた時は明るく迎えてやろうと、とらや一同。
程なく帰ってきて、とらや一同はヘンに明るく迎えるが、それがかえって寅さんの気に障る。
いきなり険悪ムード。
酒を飲みに行った寅さんは昔の商売仲間と会い、とらやに連れてきて大騒ぎ。
さくらに酒を注がせ、おいちゃんは怒り心頭。
さらにはさくらに何か歌え!とまで。
さくらは歌う。その悲しい歌声が胸に突き刺さる。
愚かしき事の数々の寅さんだが、この時ばかりは同情も弁護も出来ない。本当に愚か。
妹の悲しい歌声を聞いて、さすがの愚兄も目が覚める。
俺は何てバカなんだ…。
今回は一日も滞在せず、あっという間に旅へ。
ひろしの母が死去。
ひろしはさくらを連れて実家に戻る。
家族だけの通夜の席で、父と長男と次男は、在りし日の妻/母を偲ぶ。
欲も無く、夫や子供たちに尽くし、日本女性の鑑だった、と。
ひろしはそれに反論。
昔ひろしは母の夢や本音を聞いた事があり、それらを全て諦めた可哀想な人生だった、と。
亡き母は幸せだったのか、不幸せだったのか…?
葬式に寅さんがやって来る。
厳粛な雰囲気に、ついついおふざけ。
遺族一同の写真を撮る際、「笑って~」と言ってしまい、さくらに咎められ、仕切り直しての「泣いて~」は迷台詞(笑)
それから暫く、ひろしの父の家に厄介になる寅さん。
元大学の先生で真面目で堅物で面白味の無いひろしの父と、自由気ままな寅さん。
ミスマッチのように思えて、何故か妙に気が合う。ひろしの父も寅さんを気に入ってるよう。
そろそろお暇しようとした時、自由気ままな旅暮らしの寅さんに、ひろしの父はある話を説く。
昔、夜の田舎の田んぼのあぜ道を歩いていたら、庭にりんどうの花が咲いたある一軒家で、明るい電灯の下、家族が水入らずで夕食を食べている。
これが人の営みの本当の幸せではないのか。
人は絶対に一人では生きられない。
影響を受け易い寅さん。平凡な営みに逆らってきたこれまでを改めて考え直す。
柴又に帰ってきて、人並みに生きる事を宣言。
でもそれには、家庭があってこそ。
何処かに居ないかね。30代ぐらいの美人で、手の掛からないような子供が居るような女性が。
…いや、ちょうど居るんだな。
お寺の近くに新しく出来た喫茶店。
店主は少々苦労も滲ませる色気のある30代ぐらいの美人で、夫とは死に別れ、女手一つで息子を育てている。
マドンナは、池内敦子。
とらや一同、またまた頭が痛い…。
マドンナは気苦労が絶えない。
息子は自閉症。
が、寅さんと遊んだ事で友達も出来、明るく元気に活発になる。
喫茶店の経営の事で、お金の問題。
こればっかりは寅さん、どうしてやる事も出来ない。
ある夜の、寅さんとマドンナの対話。
寅さんはマドンナに、平凡な営みこそ幸せと話す。
マドンナは寅さんのような自由気ままな旅暮らしに憧れる。
何もかも捨てて、旅に出たい、と。
それを聞いて寅さんは…。
今回は寅さんは身を引いた。
あっしのようなろくでもない生き方はいけませんぜ、とでも言うように。
寅さんにとっては、周りの人々の平凡な営みこそ幸せ。
周りの人々は、寅さんのような自由気ままな生き方をしてみたい。
人の営みとは…? 幸せとは…?
いつもながら笑わせつつ、今回は本筋もサブエピソードもしみじみしんみりとさせる。
個人的に、初期の作品の中でも出色の一本!
おいちゃん役の森川信が翌年に死去した事により、本作が最期の出演に。
「あ~、ヤダヤダ」
「まくら、さくら出してくれ」
でも、何と言っても、「バカだねぇ…」。
ユーモア入り交じりの嘆きとぼやきの言い回しは、初代森川おいちゃんが絶品であった。
・オープニングとエンディングの劇団との関係、ちゃんと繋がっている。これ以降の作にも登場する模様、楽しみ。
・あんまり勉強しないと寅さんみたいになっちゃうよ
・おいちゃん大活躍。寅との喧嘩。今作が最後なんですね、感慨深い。
・博の母葬儀。困惑のさくら。博の母は幸福だったか、重い。
・名優志村喬、リンドウの花。定住、漂白、どちらが幸せ、深い。
・子どもに人気の寅。精神年齢(笑)
・振られない寅、新しい。
やっぱりさくらが一番眩しい。こんな妹欲しかった(毎回言ってる 笑)