ジョン・フォードが「黄色いリボン」に次いで製作、監督した1950年度西部劇で、彼とメリアン・C・クーパーの協同製作になるアーゴシイ・プロ作品。サタデイ・イヴニング・ポスト誌所載のジェイムズ・ウォーナア・ベラの原作をジェイムズ・ケヴィン・マクギネスが脚色、撮影は「駅馬車(1939)」のバート・グレノン、音楽監督はヴィクター・ヤングが担当する。主演は「黄色いリボン」のジョン・ウェインとベン・ジョンソン、「わが谷は緑なりき」のモーリン・オハラのほか、「仔鹿物語」のクロード・ジャーマン・ジュニア、「タルサ」のチル・ウィルス、「血と砂(1941)」のJ・キャロル・ナイシュ、「黄色いリボン」のハリイ・ケリイ・ジュニアとヴィクター・マクラグレンらが出演。リパブリック日本支社開設第1回作品。
リオ・グランデの砦評論(4)
描写も「黄色いリボン」の流れを汲んだ叙事詩的なところがあるが、ジョン・ウェインが演じるカービー・ヨークは「アパッチ砦」の主人公と同じで、「アパッチ砦」の続編と見なすことができる。階級は大尉から大佐に昇級している。
なお、名コンビとなったヴィクター・マクラグレンが演じるのは「黄色いリボン」と同じクインキャノンだ。こちらも軍曹から曹長になったようだ。
このクインキャノン、ヨーク大佐とは切っても切れない主従関係だが、今回はヨークの妻キャサリンとの過去に確執がある設定で、ふたりの閒のモヤモヤ感が笑いを誘う。陰険にならないところにキャサリンの人柄が出ている。
タイリー(ベン・ジョンソン)とサンデー(ハリー・ケリー・ジュニア)が、スタントなしで2頭の馬に跨るハイレベルな乗馬術・ローマ式立ち乗りをするシーンは見応えがある。昔は凄い俳優がいたものだと感心する。
このローマ式立ち乗りに挑戦する息子にカラダを硬くし、仲間と殴り合って治療を受ける姿を見ては微笑むヨークの親心がよく出ている。
冒頭、険しい顔で登場したキャサリン(モーリン・オハラ)の表情もラストでは和らぐ。夫婦は円満が何よりだ。ヴィクター・ヤングの“Dixie (End Title)”に乗せて日傘を回すキャサリンの姿が楽しそうで微笑ましい。
さて今作では、クインキャノンのトボけたお笑いのほかにも、賑やかなお嬢ちゃんマーガレットの無邪気さにも笑える。
さらにヨークの息子ジェフの盟友となるタイリーは、乗馬術に長けているだけではなく、馬を見る目があるというのがポイントで、笑えるだけでなくラストのオチに繋がる。
最前線に駐屯中の軍隊に女が勝手に入ってきて普通にそこで生活してしまうし、そこでやたらと家庭内の問題を持ち込むし、恋愛の話にもなるしで、この砦でいったいどんな物語を展開したいのか。それにやたらと音楽を歌ったり奏でたりして、これは音楽劇ですか。何を描きたいのか焦点が散漫になっている物語は気に入らない。この当時は普通であったであろうが、夜中に呪文を唱える異質の野蛮人として登場する劇中のアメリカ先住民に対する扱いも気にくわないし、白黒映像も観辛いし、敵の村に突撃する戦闘場面もどうなったのかよくわからないまま勝ってしまっている。全体に古い映画という印象。ただし騎兵隊の馬術は上手かった。
突撃ラッパを響かせて爆走して救援に突入する騎兵隊!
これぞ騎兵隊という映像をたっぷりと堪能できる
しかも、お話が重層的であり見応えたっぷりだ
まずジョン・ウェイン演じる騎兵隊隊長の重責と厳しい中にも人情味溢れる指揮ぶりを描く物語である
そこに新兵として現れる息子
彼は仕官学校を成績不良で退学させらていたのだ
その息子をつれもどそうと彼を追ってくる妻
その二人とは指揮官は15年も会っていない
作戦上やむを得ず妻の実家の農園を焼き払ったことをきっかけとして、15年も妻も幼かった息子も放置して最前線で単身赴任しどうしだったのだ
この崩壊した家族の絆の再建の物語でもある
妻役はモーリン・オハラでプライドが高く気が強い、しかし実は心優しい女性を見事に演じていてジョン・ウェインとお互い見つめ合うシーン、並んで立つシーンの目の動き、気遣いと言った部分に演技以上の何かのケミストリーまで感じてしまうほど
また、その息子の男としての成長の物語でもあります
そして、それを見守る父な物語でもあるのだ
彼のまだ高校生のような風貌も配役の勝利で素晴らしい
そこに、保安官が殺人罪で逮捕しようとする息子の同期入隊の戦友のエピソードが絡む
そして、指揮官とは長い上司部下の関係であるクインキャノン曹長のコメディリリーフが挿入される
この曹長役のヴィクター・マクラグレンは騎兵隊三部作全てに出演し、さらにフォード監督の次回作の静かなる男にも出演している監督のお気に入り
本作では彼の出演シーンが大幅増量されている
彼のシーンは本当に生き生きしており楽しい
表情、仕草を見ているだけで面白い
その上、連隊歌手の歌のシーンも美しく、たっぷりある
しかも戦闘シーンの迫力は駅馬車並みなのだから
もう本当に楽しめる
冒頭は戦いから砦に帰投する騎兵隊のシーンから始まる
道の左右に並ぶ彼らの妻たちが心配そうに隊列の中に自分の夫がいるか探しているシーンから始まる
負傷者は馬が引きずる担架に横たわっている
その顔が夫ではないかと覗きこむのだ
そして終盤も同じシーンだ
騎兵隊が激戦を終え砦に帰ってくる
そこには夫と息子の無事を探す指揮官の妻の姿がある
ラストシーンは手柄を立てた息子達の表彰シーンだ
そこには殺人罪に問われている彼の戦友もいる
見事にすべてのお話が畳まれて大団円となり
最後にクスリと笑わせるオチをつけて綺麗に終わる
これ程見事な構成で見応えがあり、後味の良い西部劇はないだろう
ベストオブベストだ!